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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
安成は、その日あたかも戒厳軍司令官を初め二、三の陸軍の重職が交迭し、一大尉一特務曹長が軍法会議に廻されたという明日発表される軍憲の移動を話して、こういう重職の交迭は決して尋常事ではない。よほどの重大な原因がなければならない。当局者の言明に由れば数日前に突発した事件に関聯するというが、その突発事故というのは何だか、マダ発表を許されないと堅く緘黙している。が、ウッカリ当局者が滑らした口吻に由ると不法殺人であって、殺されたものは支那人や朝鮮人でないのは明言するというのだ。
「どうもそれが大杉らしいのです、」と安成は痛く昂奮していた。
ヨモヤとは思うが、大杉は野枝と一緒に鶴見の弟の家から季の妹の子を伴れて、弟に送られて川崎まで帰って来たのはタシカで、それから先きが行方不明なのだそうだ。マサカに足弱を連れて交通の不便なこの際に野越え山越え行方を晦ましたとは思われない。ドコかに拘留されてるに違いないが、ドコの警察にもいないとすれば陸軍より外にはない。が、陸軍では知らないという。が、支那人でも朝鮮人でもないものを殺した不法殺人で戒厳軍司令官初め二、三の重職が解職され、一、二の軍憲が司法へ廻されたというこの日の突発事件はヨモヤとは思うがドウも大杉と関聯しているらしいというのが安成の憶測であった。