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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

尤も『浮雲』に由て一躍大家数に入った二葉亭の成功については老親初め周囲のものは皆驚嘆もし満足もした。丁度ドストエフスキーの『虐げられた人々』中のイユメニエフという老人が青年作家たる若い甥の評判高い処女作を読んで意外な作才に驚くと同一の趣きがあった。が、文名の齎らし来る収入はというといくばくもなかったので、感嘆も満足もただの一時であった。加之ならず、二葉亭は一足飛びに大家班に入ったにかかわらず、文学を職業とする気があるかないか解らぬくらいノンキであって、文名の籍甚に乗じて文壇に躍り出すでもなく、そうかといって他に相当な生活の道を求める手段を講ずる気振もなかったから、一図に我が子の出世に希望を繋ぐ親心からは歯痒くも思い呆れもして不満たらざるを得なかった。

搗てて加えて一家の実際の事情は岡目で見るほど決して気楽でなかった。気楽どころかむしろ逼迫していた。これより二、三年前、二葉亭の先人は官を罷めて聊かの恩給に衣食し、二葉亭の毎月の学費も最後の一、二年は蓄財を割いて支弁しつつ万事の希望を二葉亭の卒業後の栄達に期していたのである。であるから二葉亭は卒業するとしないとに論なく、学校を罷めたその日から直ぐ一家を背負って立たねばならない実際上の責任があった。