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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

二葉亭の日記に由ると、父の恩給高は十一円であったそうだ。如何に物価の安い四十年前でもまた如何に小人数でも十一円で一家を維持するというは容易でなかったから、岡目から見るように気楽でなかったのは想像されるので、この窮状を子として拱手して知らぬふりする事は出来なかった。尤も公債もあり蓄財もあり、家屋も自分の所有であって、正味十一円こっきりの身代ではなかったが、割合に気楽な官吏の生活を送ったものが多年倹約して剰した蓄財を日に日に減らして行くは、骨を削り肉を刻むに等しい堪えがたい苦痛であるのが当然で、何かにつけて愚痴の出るのも無理ではなかった。かつあたかも少年時代から友達同士の山田美妙が同じ文壇に立って名声籍甚し、『以良都女』や『都之花』の主筆として収入もまた豊かであるのを見ては、二葉亭の生活上の煮え切らない態度が戻かしくなって、何かにつけては「山田の武さんを御覧」と云い云いした。

二葉亭がもし「山田の武さん」の真似をするツモリなら、生活問題の如きは造作もなく解決されたのである。が、二葉亭の文学というは満身に力瘤を入れて大上段に振りかぶる真剣勝負であって、矢声ばかりを壮んにする小手先剣術の見せ物試合でなかったから、美妙や紅葉と共に轡を駢べて小手先きの芸頭を競争するような真似は二葉亭には出来なかった。