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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

真実、提調時代の二葉亭は一生の中最も得意の時であった。俸禄も厚く、信任も重く、細大の事務尽く掌裡に帰して裁断を待ち、監督川島不在の時は処務を代理し、隠然副監督として仰がれていた。然るにこの得意の位置をどうして抛棄するようになった乎、その原因が判然しないが、左に右く止むに止まれない或る事情があって、監督川島及び僚友が頻りに留任を勧告するをも固く謝して、決然辞任して帰朝した。この間の事情は当時の消息を知るものの間にも種々の説があって判然しないが、仮に川島あるいは僚友との間に多少の面白からぬ衝突があったとしても、その衝突は決して辞職に値いするほどの大事件ではなかったらしい。ツマリ二葉亭の持前の極端な潔癖からしてそれほどでもない些細な事件に殉じて身を潔くするためらしかった。二葉亭自身もこの事については余り多く語らなかった。「腹を立てるほどの事でもなかったので、少と早まり過ぎたのサ、」とばかり軽くいっていた。

間もなく日露の国交が破裂した。北京に在留中から露西亜の暴状を憤って、同志と共にしばしば公使館に詰掛けて本国政府の断乎たる決心を迫った事もあり、予てからこの大破裂の生ずべきを待設けて晴れの舞台の一役者たるを希望していたから、この国交断絶に際して早まって提調を辞して北京を去ったのを内心窃かに残念に思っていたら