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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
『其面影』を発表するに先だちて二葉亭は新作の題名について相談して来た。「二つ心」とか「心くずし」とか「新紋形二つ心」とかいうような人情本臭い題名であって、シカモこの題名の上に二ツ巴の紋を置くとか、あるいは「破れウィオリノ」という題名として絃の切れたウィオリンの画の上に題名を書くというような鼻持ならない黴臭い案だったから、即時にドレもこれも都々逸文学の語であると遠慮なく貶しつけてやった。かれこれ往復二、三回もした、最後に『其面影』でモウ我慢してくれといって来た。この相談を受けた時、二葉亭の頭の隅ッコにマダ三馬か春水の血が残ってるんじゃないかと、内心成功を危ぶまずにはいられなかった。
いよいよ『其面影』が現れて、回一回と重ぬるに従って益々この懸念が濃くなった。『其面影』の妙処というは二十年前の『浮雲』で味わされたものよりもヨリ以上何物をも加えなかった。加之ならず『浮雲』の若々しさに引換えて極めて老熟して来ただけそれだけ或る一種の臭みを帯びていた。言換えると『浮雲』の描写は直線的に極めて鋭どく、色彩や情趣に欠けている代りには露西亜の作風の新らしい匂いがあった。