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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
さらぬだに淡島屋の名は美くしい錦絵のような袋で広まっていたから、淡島屋の軽焼は江戸一だという評判が益々高くなって、大名高家の奥向きから近郷近在のものまで語り伝えてわざわざ馬喰町まで買いに来た。淡島屋のでなければ軽焼は風味も良くないし、疱瘡痲疹の呪いにもならないように誰いうとなく言い囃したので、疱瘡痲疹の流行時には店前が市をなし、一々番号札を渡して札順で売ったもんだ。自然遅れて来たものは札が請取れないから、前日に札を取って置いて翌日に買いに来るというほど繁昌した。丁度大学病院の外来患者の診察札を争うような騒ぎであったそうだ。
淡島屋の軽焼の袋の裏には次の報条が摺込んであった。余り名文ではないが、淡島軽焼の売れた所以がほぼ解るから、当時の広告文の見本かたがた全文を掲げる。
私店けし入軽焼の義は世上一流被為有御座候通疱瘡はしか諸病症いみもの決して無御座候に付享和三亥年はしか流行の節は御用込合順番札にて差上候儀は全く無類和かに製し上候故御先々様にてかるかるやきまたは水の泡の如く口中にて消候ゆゑあはかるやきかつ私家名淡島焼などと広く御風聴被成下店繁昌仕ありがたき仕合に奉存製法入念差上来候間年増し御疱瘡流行の折ふし御軽々々御仕上被遊候御言葉祝ひのかるかるやき水の泡の如く御いものあとさへ取候御祝儀御進物にはけしくらゐ