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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

随分次郎にもきいてみたんだけれど、はっきりしないところがあるんでね。」

お浜――「ええ、……それは、何でも、……お鶴にきくと、喜太郎が坊ちゃんに泥をぶっつけたのが、もとなんだそうでございますよ。」

お民――「だしぬけにかい。」

お浜――「ええ……」

お民――「理由もなしに?」

お浜――「ええ、何でも、校番室で坊ちゃんがお鶴と遊んでおいでのところへ、窓から泥を投げこんだらしゅうございます。」

次郎は、握飯の話が出るかと思って、ひやひやしていたが、とうとう出なかった。自分もそのことを母に言わないでおいてよかった、と彼は思った。

お民――「校番室なんかで、お鶴と遊ばしたりするからいけないんだよ。」

俊亮――「とにかく、もうすんだことだ。」

お民――「でも庄八は、こちらから相当の挨拶をしなければ、今夜にも自分で出かけて来るとか言ってるそうです。」

俊亮――「来たっていいじゃないか。向こうからも一応は挨拶に来るのが当然だからね。」

お民――「でもそれじゃ、事が面倒ですわ。」

俊亮――「なあに、何でもないよ。俺がよく話してやる。」

お浜――「そりゃ旦那様におっしゃっていただけば、庄さんも納得するとは思いますが、何しろあれほどの傷ですし、やはり坊ちゃんのためには、一応はさっぱりなすった方が……」