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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
(やっぱり、うちにかくれている方が安心だ。)
そう思って、彼はあたりに気を配りながら杜をとび出した。
*
その日の夕方、次郎は、俊亮と、お民と、お浜の三人が茶の間で話しこんでいるのを、隣の部屋から立ち聴きしていた。
俊亮――「それで先生はどう言っているんだね。」
お民――「とにかく、庄八の方に、一刻も早くこちらから挨拶をした方がいい、とおっしゃるんです。」
俊亮――「挨拶には、もうお前が行ったんだろう。」
お民――「ええ、でもほんのおわびだけ……」
俊亮――「それでいいじゃないか。」
お民――「でも、向こうに傷を負わしたんですもの、何とか色をつけませんと、庄八も承知しないでしょう。」
俊亮――「庄八が承知しない? 先生がそう言ったかね。」
お民――「ええ。」
俊亮――「じゃ、俺はいよいよ不賛成だ。こちらが本当に悪けりゃ、庄八にだって誰にだって、いくらでもあやまるし、場合によっては、金も出さなきゃなるまいさ。しかし、何といっても、喜太郎の方が年上だからね。」
お浜――「そうですとも、もともと悪いのは、何といっても喜太郎でございますよ。」
お民――「いったい、ほんとうのところはどうなんだい。