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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

そして、今度母に詰問された場合、筋道の通った、尤もらしい答弁をするために、彼はもう一度薪の上に腰掛けて考えはじめた。

もうその時には日が暮れかかっていた。小屋は次第に暗くなって来た。そろそろ夕飯時である。しかし、お糸婆さんも、直吉も、それっきりやって来ない。このまま放って置かれるんではないかと思うと、さすがにいやな気がする。かといって、こちらからのこのこ出て行く気には、なおさらなれない。

(父さんはもう帰ったか知らん。帰ったとすればこの話を聞いて、どう考えているだろう。父さんまでが、もし知らん顔をして、このまま何時までも僕を放っとくとすると、――)

次郎は、そう考えて、胸のしんに冷たいものを感じた。そして、次の瞬間には、その冷たいものが、石のように凝結して、彼をいよいよ頑固にした。

(二日でも三日でも、僕はこうしているのだ。僕はちっとも困りゃしない。)

しかし、それから小半時もたって、あたりが真っ暗になると、流石に彼も辛抱しきれなくなった。やはり家の様子が知りたかった。

彼はとうとう思いきって小屋を出て、そっと茶の間の縁側にしのび寄った。茶の間には、あかあかと燈がともっていた。