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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

「それで恭一にも、俊三にも、よくきいてみたのか。」

父の声である。

「いいえ、べつべつにきいてみたわけではありませんけど、……」

「それがいけない。三人一緒だと、どうしたって次郎の歩が悪くなるにきまっている。」

「貴方は、まあ! みんなで次郎に罪を押しつけたとでも思ってらっしゃるの。」

「口では押しつけなくても、心で押しつけたことになる。」

「では私、もう何も申上げませんわ。どうせ私には、次郎を育てる力なんかありませんから。」

「そう怒ってしまっては、話が出来ん。」

「怒りたくもなろうじゃありませんか。次郎が正直に白状したのまで、私が押しつけてさせたようにお取りですもの。」

「次郎は、しかし、すぐそれを取消したんだろう?」

「それがあれの手に負えないところなんですよ。」

「しかし、それがあれの正直なところなのかも知れない。」

「貴方、本気で言ってらっしゃるの。」

「本気さ。あれは強情な代りに、一旦白状したら、めったにそれを取消すようなことはしない子だ。それを取消したところをみると、取消しの方が本当かも知れない。」

「おやおや、貴方は、あの子を人の罪まで被るような、そんな偉い子だと思ってらっしゃるの。