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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
霜どけの田圃道を、黒板や、腰掛や、掃除道具などの行列が、かまびすしい話し声と共につづいていた。
次郎は、腰掛を一つと箒を一本だけ運んでしまったらすぐかえってもいい、と先生に言われていた。しかし、彼は、それだけでは何だか物足りなく感じた。六年生などと一緒に、黒板か何か大きいものを担いで、もっとはしゃいでみたい気がした。で、彼は、自分の受持をすましたら、校番室の道具でもいくらか手伝ってやろうと考えていた。
しかし、彼が新校舎から引返して来て校番室に這入ってみると、そこはもうがらんとしていて箒一本残っていなかった。そして、お浜かたった一人、気ぬけがしたように上り框に腰をかけて、自分の膝の上に頬杖をついていた。彼女は次郎の這入って来るのをぼんやり見ていたが、
「次郎ちゃん、もうおすみ?」
と、力のない声で言った。
「ああ、すんだよ。これから乳母やのとこのを運ぶんだい。」
次郎は、そう言いながら、あらためて部屋を見まわした。
「そう? でも、もう何もありませんのよ、ほら。」
お浜は相変らず頬杖をついたまま、ほんの僅かだけ首を動かして、あたりを見た。
「早いなあ、乳母やは。