轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
彼はしばらく立ったまま次郎の様子を見ていたが、
「次郎、そんな真似はよせ。風邪を引くぞ。……ほら、いいものを持って来た。一人で好きなだけ食べたらさっさと降りて来るんだぞ。」
手燭を畳の上に置きながら、そう言って、何か重いものを次郎の背中の近くにほうり出した。そして、そのまま下に降りて行ってしまった。
次郎は、動きたくなかった。しかし、知らん顔をしているのも、父にすまないような気がしたので、父が梯子段を降りきった頃に、ともかく起き上って、父が置いていったものを見た。それは新しい菓子折だった。そっと蓋をとってみると、中にはまだ三分の二ほどのカステラが残っていた。それにナイフが一本入れてあった。
次郎はむしろあっけにとられた。甘いものが箱ごと自分の自由になるというようなことは、彼の経験の世界から、あまりにもかけ離れたことだったのである。彼は少し気味わるくさえ感じた。そしてちょっと父の心を疑ってみた。が、彼は急いでそれを打消した。それは、さっきの父の言葉が、いつもの快活な親しみのある調子をもって、彼の心に蘇って来たからである。
彼は急に食慾をそそられた。で、彼はすぐカステラにナイフを入れはじめた。