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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
「ここにいたければ、いてもいい。じゃが、もっと素直な心になって貰わんと、みんなが困る。父さんもそれを心配していられるんじゃ。」
それを聞くと、次郎の頭には、すぐ謙蔵の顔が閃めいた。彼だけがこの席をはずしているわけも、どうやらわかるような気がした。しかし、それならそれで、はっきりそう言ってくれてもよさそうに思えた。何で父は、母の看病のことなんかで、あんな意地悪を言ったんだろう。そう思うと、やはりわけがわからない。次郎は、しくしく泣きながらも、頭の中は、かなり忙しく仂かせていた。
「お祖父さんのおっしゃる通りだ。」と、今度は俊亮が言った。
「もうお前も六年生だ。少しは道理もわかるだろう。少しのことにすねたりして、お祖父さんやお祖母さんに、いつまでも心配をかけるんじゃない。それに第一、――」と、少し間をおいて、
「伯父さんや叔母さんのご苦労は、これからなみ大抵じゃないんだ。何しろ病人を世話して下さるんだからね。この上、お前に変にひねくれた真似なんかされたんでは、この父さんが全く申訳がない。母さんだって落ちついて養生が出来ないだろう。お前は、母さんの看病ぐらい何でもないように言っているが、本当の看病はね、病人に気をもませないことなんだ。