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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

俊亮はすぐ、ごろりとその上に寝て団扇を使いはじめた。お民もその端に腰をおろしながら言った。

「次郎も、みんなと一緒に、就寝んだらいいじゃないの。」

次郎は不服らしい顔をした。すると俊亮が傍から言った。

「まだ眠くはないさ。早いんだから。」

「でも外の子はもう就寝みましたよ。」

「馬鹿に早いじゃないか。……次郎はもう少し父さんのそばで涼んでいけ。」

「まあ、大そう次郎がお気に入りですこと。……では、次郎ここに掛けて、父さんのお相手をなさい。」

次郎は最初遠慮がちに縁台に腰を下したが、間もなく父と三四寸の間隔をおいて、自分もごろりと横になった。彼はなぜか、父の真っ白な、ふっくらした裸に、自分の体をくっつけてみたくなった。彼の汗ばんだ体は、蚊にさされたところを掻くような恰好をしながら、じりじりと父にくっついて行った。

「汚ないっ。」

俊亮はだしぬけに、びっくりするような声で呶鳴りながら、はね起きた。――彼は鷹揚でなさけ深い性質に似合わす、一面神経質で潔癖なところがあり、他人の家で畳に手をついたりすると、帰ってから、何度も手を洗わないではいられない性質だった。

「どうなすったの。