轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
彼はうっとりとなって、一心に青空を見つめた。するとそこに、ぼうっと黒ずんだ小さな影のようなものが現れた。お玉杓子の恰好をしている。それがすうっと空を動いては、どこかで消える。眼を据えるとまた現れる。彼は幾度となくその影を逐った。逐っているうちに、いつの間にか夢のようにお鶴の顔が浮き出して来た。
彼は眼をつぶった。すると、お浜、お兼、勘作と、つぎからつぎへ、校番室の暗い部屋で親しんだ人達の顔が思い出されて来た。彼は、甘いような悲しいような気分にすっかりひたり切って、そばに父や兄がいることさえ忘れてしまった。
「さあ、これから泳ぐんだ。」
俊亮は立ち上って砂の上に四股を踏んだ。
「恭一は、もう随分泳げるだろうね。」
「まだ少しだよ。」
「父さんが見てやる。泳いでごらん。」
恭一は、用心深そうに、そろそろ深みに這入って行った。そして、水が乳首の辺まで来たところで、彼は浅い方に向かってほんの一間ばかり、犬かきをやって見せた。
次郎は熱心にそれを見つめていた。
「うむ、大ぶ上手になった……さあ今度は次郎だ。」
次郎は、父の顔と水を見くらべながら、ちょっと尻ごみした。