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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

」

お民はしぶしぶ出て行った。そして間もなく二人をつれて来て、火鉢の前に坐らせた。

「恭一、お前、正木のお祖父さんとこまで、使いに行って来い。」

「…………」

恭一は、何のことだか解せないと言ったような顔をして、父を見た。

「駄目か、一人がいやなら次郎をつれて行ってもいいが……」

「…………」

恭一はやはり返事をしないで、今度は母の顔を見た。

「二人でもいやかね。正木のお祖父さんが喜ぶんだがな。」

「…………」

恭一は眼を伏せて、母によりそった。

「やっぱり駄目か。次郎、どうだい、お前は。」

次郎はそれまでに何度も恭一の顔をのぞいていたが、「行こうや、恭ちゃん。」と少しはしゃぎ加減に言った。

恭一は、横目でちょっと次郎の顔を見たきり、やはり、返事をしない。

「恭一がいやなら、次郎一人で行け。どうだい。」と、俊亮は少し笑いを含んで、そそのかすように言った。

さすがに次郎も、それにはすぐ返事が出来なかった。そして、しばらくは、わざとらしく首をひねっていたが、いかにも歎息するように、

「僕、道を間違えるといけないからなあ、橋んとこまでなら知ってるんだけれど。」

「橋んとこまで知っているなら、あれからすぐじゃあないか。