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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

実に驚くべきことは、古代の純粋の日本語には、一も抽象観念を現わす言語が無かったという事実である。(支那の言語が輸入されて、始めて「忠」や「孝」やが考えられた。)

こうした抽象性のない国民が、一方に於て直感的叡智に発達すべきは当然である。そしてこの方では、実に驚くべき世界的の文化を創造している。即ち美術の如き観照本位の芸術が、今日世界的に優秀な所以であるが、さらにその徹底したるものは、レアリズムの山頂を飛躍して、遂に象徴主義にまで到達している。この「象徴」の何物たるかは後に述べるが、世界に於て最も早く、かつ最も徹底的に象徴芸術を創造したものは、実に我が日本人あるのみだ。そしてこの象徴主義に徹したことから、不思議にも日本人は、詩的精神の最も遠い北極のレアリズムから、逆に西洋詩の到達する南極に逼ってきた。

要するに日本人は、客観性の一方にのみ徹底して、主観性をほとんど欠いてるところの、世界に珍らしい国民である。日本人がいかに主観性を欠いているかは何よりもその言語が証明している。例えば我々の日常会話は、常に「賛成だ」とか「水が欲しい」とかいう。そして、「私」