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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
反対に小説では、これが主観から切り離され、純に知的な眼で観察される。故に同じ恋愛等を題材としても、詩ではこれが感情によって歌い出され、小説では事件や心理の経過として、外部の観察によって描出される。故にまたこの点から、一般に詩は「感情のもの」と言われ、小説は「知的のもの」と考えられている。
けれどもこの関係から、小説家が詩人に比して、より知的な人物である如く考える人があるならば、驚くべき笑止な誤謬である。智慧の優劣について言うならば、詩人はむしろ小説家に秀れていても劣りはしない。なぜなら前に他の章(観照に於ける主観と客観)で述べたように、認識上に於ける主観と客観との相違は、智慧が感情に於て結合していると、感情から独立して有るとの相違にすぎず、その知性の働く実質には、なんの変りもないからである。ただ様式上の相違のために、詩は感情によって歌い出され、小説は客観によって描出される。しかもこの様式上の相違が、詩人と小説家とを区別するところの、根本の態度を決定する。
詩人は常に、世界を主観的に眺める為めに、認識が感情と結合しており、小説家の如くレアリスチックに、真の客観された存在を観照し得ない。