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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
なぜならソクラテスは、街路に立ってだれにでも話しかけ、少しも権式ぶらないざっくばらんの人物なのに、プラトンはアカデミイの学院に閉じこもって、典雅に身を持していた人物だから。
そこでこの定評は当っているか、もし哲学者としての態度で言えば、ソクラテスは決して俗衆的でなく、むしろプラトン以上に貴族的だ。実にあの義人哲学者は、すべての俗衆的愚劣のもの、俗衆的先入見を憎悪し、これによって獄に毒死されたのである。故にこの態度で言うならば、彼もまたプラトンと共に貴族的(超俗衆的)の人物である。そしてもしこの意味なら、此処に「貴族的」と言う言葉は、耶蘇にも、仏陀にも、トルストイにも、一切の義人と生活者に共通し、その人格的本質の特色になるだろう。のみならず芸術そのものの目的が、本来また貴族的のものである。なぜなら芸術は、俗衆に媚びるためのものでなく、俗衆を啓蒙し、指導するためのものであるから。
故に詩と小説との比較に於て、小説を俗衆的であるという意味は、プラトンとソクラテスの比較に於て、後者の人物がよりざっくばらんで平民的に親しみ易かったという、表面上の気質や趣味性にのみ関すべきで、芸術としての本質上には別問題とすべきである。