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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

また前者は超現世的、超人間的であり、後者は現世的、人間的に一貫してきた。

しかしながらこれ等の古典詩は、近代に至って悲しむべき凋落の悲運に会した。特に上古から文芸復興期にかけ、全盛の栄華を尽した叙事詩は、十八世紀末葉以来漸く人々に疎外され、最近に至って全く影の薄いものになってしまった。一方抒情詩もまた、著るしくその形式情操を変貌し、今日普通に称呼される意味の言語は、古典韻文のそれとちがって、単なる牧歌体の短篇詩を名称している。実に今日の詩壇に於て吾人が一般に言っている抒情詩とは、近代に於ける短篇詩の謂であって、古典のそれと意味が大いにちがっている。したがって今日の言葉で言う叙事詩とは、詩の内容と関係なく、単に短篇詩に対する長篇詩を指す観がある。

さて此処で考うべきは、何故に古典の長篇詩が、近代に至って衰滅したかということである。あの上古から近世の始めにかけて、マンモスや怪竜の群の如く、地球上を横行していた巨大な長篇韻文が、最近二三世紀の間にかけて、一時に没落してしまったと言うことは、たしかに夢のような天変地異を感じさせる。何等かそこには、深い特別の事情が無ければならない。