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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
によって、悉く皆没落せざるを得ないだろう。然るに音楽やバレーの如きは、近代に於て益々栄えたのみならず、古代中世のものに比して、却って著るしく感情的になり、浪漫的、幻想的に傾向して来た。(昔の音楽が極めて理智的なものであることは前に述べた。)
のみならず近代の短篇詩は、浪漫派を始めとして、著るしく皆感情的で、昔の叙事詩等のものに比し、却ってその点で特色している。故に上述のような解説が、皮相な謬見にすぎないことは明らかである。けだし人間に於ける知性と情性とは、常に並行して両存するものである故に、その一方が進む時は、他方も前に進むのである。一端を押しつけることによって、他端が後に引くことは考えられない。
では近代初頭に於ける古典韻文の凋落は、どこにその真原因を持つのだろうか? 前言う通りこの解説は、少し後の章に譲ることにし、此処では深く触れることを避けておくが、すくなくとも表面の理由としては、丁度今言った通俗の解説が、逆に裏返されたところに事情している。即ち文芸復興期以来に於ける、理智偏重の啓蒙思潮が、近代初頭に於て反動され、人心の中に深く圧迫された感情が、一時に洋々として堤を切った為、此処に十九世紀浪漫主義の運動となり、古典韻文の生ぬるい叙事詩等が、非主観的として排斥され、非感情的として疎外されてしまったの