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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

彼等の趣味に取ってみれば、自由詩は軟体動物のようなもので、どこにもしっかりした骨組みがなく、柔軟でぐにゃぐにゃしているところの、一の醜劣な蠕虫類にすぎないだろう。反対に一方の眼でみれば、定律詩は形式的で生気がなく、時代の流動感を欠いているように思われる。

* 「権力感情」という言語を、始めて強いアクセントで語ったものは、実に独逸の貴族主義者ニイチェである。ついでながら言っておくが、虚無主義の本質は、「権力を否定する権力感情」で、言わば「貴族を殺そうとする貴族主義」である。故にニヒリズムは近代の逆説された叙事詩思想で、著者の所謂「変装した陰謀者」「歪みたる憎々しきもの」の一つである。

独逸音楽と南欧音楽の特色は、エピカルとリリカルとの、最も典型的な好対照である。独逸音楽の特色は、すべてに於てリズミカルで、拍節が強くはっきりとし、軍隊の重圧的な歩調のように、重苦しくどっしりしている。反対に仏蘭西や伊太利の音楽は、メロディアスの美しい旋律に充ち、柔軟自由にして変化に富んでいる。前者は正しく定律詩の音律美で、後者は自由詩の音律美である。

第八章 浪漫派から高蹈派へ