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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

人はしばしば言う。独逸人の詩は科学であると。けだし独逸人の好むものは、科学に於ける組織的、分析的、規律的、軍隊的であるところの、あのリズミカルでがっしりした形式にかかっているのだ。しかしそれが果して「詩」であるだろうか。もしそうであるならば、科学の中のクラシズムたる数学こそ、実に詩の中の詩であると言わねばならぬ。そして数学がもし詩の規範たるべきものならば、詩的精神の本質は理智であり、純粋に没情感のものでなければならぬ。

しかしながら吾人は、どんな懐疑思想の極に於ても、詩の本質をかかる没情感のものと考え得ない。数学的なる形式は、単に「純美」というべきものであって、決して詩の本質に属しないのだ。詩の詩たる本質は、所詮どんなクラシズムの形に於ても、主観に於ける感情の燃焼であり、生活的イデヤの痛切な訴えでなければならぬ。故に詩の本質は、常に必ず「生活のための芸術」であって、真の芸術至上主義には所属できない。真の芸術至上主義と言うべきものは、芸術に於ける科学者の態度を指している。即ちあの研究室の中に没頭して、一切の生活感や人間的情味を超越しているところの、真の学究三昧の態度を意味する。