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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

そしてこの特色から、我々の詩は著るしく外国のものと異っている。実に地球の東と西とは、詩に於て見るほど著るしく、距離の隔絶を考えさせるものはないのだ。

第一に西洋と日本とは、詩の起元に於ける歴史からちがっている。既に前に述べたように、西洋の詩の歴史は、古代希臘の叙事詩から始まっている。然るに日本の詩の歴史は、古事記、日本書紀等に現われた抒情詩から出ているのだ。しかも形式について見れば、西洋の詩は荘重典雅なクラシカルの押韻詩に始まっているのに、日本の上古に発生した詩は、すべて無韻素朴の自由詩である。左にその二三の例を示そう。

少女の床のべに我がおきし剣の太刀、その太刀はや。

大和の高佐士野を七行く少女ども、誰おし巻かむ。

すずこりが醸みし酒に我れ酔ひにけり、ことなぐし、ゑぐしに我れ酔ひにけり。

尾張にただに向へる一つ松、人にありせば衣きせましを、太刀はけましを。

こうした自由詩に始まった日本の詩は、後に*支那との交通が開けてから、始めて万葉集に見る七五音の定形律(長歌及び短歌)の形式を取るに至った。しかもこの定形律は、韻文として極めて大まかのものであって、一般外国の詩に見るような、煩瑣な詩学上の法則がない。