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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

考えるまでもなく、これはどっちも同じことだ。今日西洋音楽に唱歌するため、しばしば六四調や八五調の韻律されたものを見るけれども、その単調なことは何れも同じく、却って七五音より不自然だけが劣っている。

そこで最後に考えられることは、一つの詩形の中に於て、五七を始め、六四、八六、三四等の、種々の変った音律を採用し、色々混用したらどうだろうということだ。この工夫は面白い。だがそれだったら、むしろ始めから韻律を否定するに如かずである。なぜなら一つの文の中で、八六、三四、五七等の、種々雑多な音律を取り混ぜるのは、それ自ら散文の形式だからだ。韻文の韻文たる所以のものは、一定の規則正しき法則によって、反復や対比やの律動を持つからである。雑多の音律が入り混った不規則のものだったら、すくなくとも辞書の正解する「韻文」ではない。即ちそれは「散文」である。

故にこの最後の考は、詩の音律価値を高めるために、逆に詩を散文に導く――すくなくとも散文に近くする――という、不思議な矛盾した結論に帰着している。そして実に日本の詩のジレンマが、この矛盾したところにあるのだ。何となれば吾人の国語は、正則に韻律的であるほど退屈であり、却ってより不規則になり、より散文的になるほど変化に富み、音律上の効果を高めてくるから。