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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
然るに日本は、早く昔から文章語が出来、実用語と芸術語とを、判然と分けて使用していた。思うにその特殊な事情は、日本語のあまりに平板単調であるところから、表現上の屈折と力とを求めるために、古来多くの文学者によって改修され、自然に少しずつ歪められて、遂に全く日常語から変貌した特殊のものになったのだろう。けだし芸術的精神の本質は、或る高い飛躍をもった、心を上位に引きあげるものであり、本質的に貴族感的のものであるから――すべての芸術の本質は、この点で皆叙事詩的である。――芸術的表現の場合に於ては、日常語の卑俗感が不満され、必然に美と力を持つところの、より調子の高いものに改修される。(この点では西洋の文学も同じである。厳重に言えば、西洋でも文章語と日常語は同一でない。)
かく日本に於ては、国語の特殊な事情から、文章語が変則の発達をして、全く日常語と異別するようになってしまった。然るにかく二つの言語が別れた以上は、表現するすべての人が文章語のみを使用する故、一方の俗語は全く芸術から除外され、爾後は全然実用語としてのみ、専門に使用されるようになってしまった。然るに言語というものは、芸術上に使用されてのみ、始めて美や含蓄やを持つのであるから、かく実用語として閑却された日本語は、久しい間何の洗練もなく発展もなく、無趣味雑駁