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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
「主観を否定する主観精神」との、二つの主観精神の対立に外ならない。そして芸術がまたこの二つの精神によって対立されている。例えば詩に於ては、前に言った「抒情詩」と「叙事詩」の関係がこれである。そしてこの抒情詩的精神と叙事詩的精神とは、他のすべての芸術に共通している。即ち前に説いたように、小説に於ける浪漫主義と自然主義とが、この同じ関係の対立である。美術にあっては、一方にミレーやゴーガン等の、抒情派があり、一方にピカソやセザンヌ等の、歪んだ科学的の叙事詩派がある。音楽がまた同じく、スイートでメロディアスの抒情的音楽と、荘重でリズミカルな叙事詩的音楽とが、昔から常に対立している。
かくの如く西洋の文明は、抒情詩的精神と叙事詩的精神との対流であり、主観に正説する主観的精神と、主観に逆説する主観的精神との二つの者の相対に建設されている。そこで吾人は、この前の者を称して「主観主義」と言い、後の精神を称して「客観主義」と言う。西洋の文明、及びその芸術に於て考えられる主観と客観の関係は、すべてこの意味の観念に外ならない。即ちその客観と言うも、本来主観の逆説であり、相対関係の線上に立つものに外ならない。