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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
音楽でも劇でも、すべての西洋のものは上品であり、気位が高く、権威感があり、何等か心を高く上に引きあげ、或るエピカルな、高翔感的なものを感じさせる。これに対して日本の音曲や演劇やは、どこか本質上に於て賤しく、平民的にくだけており、卑俗で親しみ易い感がする。特に日本に於ても、江戸時代の平民芸術はそうであり、卑俗感が特別に著るしい。中世以前に於ける武家文化や公卿文化の芸術は、その貴族的なことに於て、高翔感的なことに於て、西洋現代のものとやや一致している。
西洋文明の特色たる、この貴族主義的の精神は、必ずしも芸術ばかりでなくして、他のあらゆる文化一般に本質している。第一その科学、哲学、宗教、芸術等に於ける、西洋流の言語感そのものからして、何となく或る威厳的な、勿体ぶった、歴々のものを感じさせ、或る崇高な権威の方へ、意志を高く飛翔させる。そして古来の日本文化には、殆どこうした貴族感がないのである。特に江戸時代に於ては、芸術家が芸人の名で呼ばれたほど、文明の本質が非貴族感的となり、デモクラチックのものに沈下していた。今日西洋人の中にあっては、アメリカ人が最もデモクラチックである。