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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

新体詩の当初以来、すべての詩壇が一貫してきた道はそうであった。彼等は夢と希望に充ち、異国にあこがれ、所有しないものへの欲情から、無限の好奇心によって進出して来た。彼等は太平洋の岸辺に立って、大陸からの潮風が吹き送る新日本の文明を、いつも時代の尖鋭に於て触覚していた。そしてこの島国をあの大陸へ、潮流に乗って導こうと考えていたところの、真の夢想的なる、青春に充ちたロマンチストの一群だった。

しかしながらこのロマンチストは、我々のあまりに現実主義的なる、あまりに夢を持たない俗物の文壇から、常に冷笑の眼で眺められ、一々侮辱されねばならなかった。実に新体詩の昔から、我々はこれを忍んできた。そして恐らく、今後も尚忍ばねばならないだろう。けれども時がくる時、いつかは文壇にもイデヤが生れ、さすがに現実家なる日本人も、何かの夢を欲情する日が来るであろう。我々はその日を待とう。そしてこの新しい希望の故に、尚かつ我々の未熟な詩を書いているのだ。もしそうでなかったら、今日のような国語による、西洋まがいの無理な自由詩など作らないで、芸術としてずっと遙かに完成されたる、伝統詩形の和歌や俳句を作るだろう。