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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

今記憶している限りでも、すくなくとも五人の詩人が、公開の紙上で僕の詩論に挑戦している。僕は常に注意して、これ等の人の議論を読んでる。にもかかわらず、かつて一度もこれに対し、自ら弁明したことがない。僕の論敵に対する態度は、常に一貫して沈黙――黙殺とは言わない――である。何故だろうか? すべての挑戦者等が、思想の立脚する根本点で、僕をまるきり誤解しているからである。

すべて弁駁とか論戦とか言うことは、相互の意見が一致せず、思想に相違点を発見するとき始めて起ってくる問題である。然るに僕の場合では、読者がまるで僕の言語を理解せず、僕の思想の主題するところを知らないで、意外な思いがけない解釈から、勝手な言いがかりをしてくるのである。例えば僕が、詩は音律要素を重視せねばならないと説くに対し、多くの意外な挑戦者等が、否、汝の言うところは誤っている。詩は音律を重視すべきであると言って、あべこべに僕を説教してくる類いである。こういう挑戦者(?)に対して、僕の常に答えようとするところは、何の反撃でもなく、弁明でもなく、単に却って賛成の意を表するのみだ。即ち、僕は、これ等の人々に答えて言っている。