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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
それは何等「認識のため」の表現でなく、情意の燃焼する「意欲のため」の芸術である。
かく二つの芸術は、初めから人生観の根柢を異にしている。一方の者にとっては、凡て現実する世界(あるところのもの)が真であり、美と完全と調和との一切が、それの観照に於て実在される。即ち彼等の主張によれば、実在は「現実以外」にあるのでなく、「現実の中に」存在する。(したがって「現実を凝視せよ」という標語が言われる。)ところが一方の人生観では実在が「現実の中に」あるのでなく、彼自身の理想の中に、観念の中に存するのである。言い換えれば、この現実世界は不満足のもの――肯定できないもの――であって、真に考えらるべき世界は、主観の構成する「観念の中に」実在する。(したがって「現実を超越せよ」という標語が言われる。)
この二つの異った思想に於て、読者は直に希臘哲学の二つの範疇、即ちプラトンとアリストテレスを聯想するであろう。実にプラトンの哲学は、それ自ら芸術上の主観主義を代表し、アリストテレスは客観主義を代表している。即ちプラトンの思想によれば、実在は現実の世界になくして、形而上の観念界に存するのである。