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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

故に表現は彼等にとって、真の第一義的な仕事でなく、イデヤの真生活に至る行路の、「生活のための芸術」である。もし彼等にして希望を達し、その祈祷が聴かれ、熱情するイデヤの夢を現実し得たらば、もはや表現は必要がなく、直ちに芸術が捨てられてしまうであろう。(だが真の芸術家の有する夢想は、イデヤの深奥な実在に触れてるもので、永遠に実現される可能がない故、結局して彼等は終生の芸術家である。)

然るに客観的の芸術家は、一方でこれと別な態度で、表現の意義を考えている。彼等は主観によって世界を見ずして、対象について観察している。彼等の態度は、世界を自分の方に引きつけるのでなく、ある所の現実からして、意義と価値とを見ようとする。故に生活の目的は、彼等にとって価値の認識、即ち真や美の観照である。然るに芸術にあっては、観照がそれ自ら表現である故に、芸術と生活とは、彼等にとって全く同一義のものになってくる。即ち生活することが芸術であり、芸術することが生活なのだ。芸術は生活以外にあるのでなく、それ自体の中に目的を有している。何とならば生活の目標が、彼等にとっては、表現(観照)であり、芸術と生活とが、同じ言語の二重反復にすぎないから。