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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
の文芸だった。だが「生活のための芸術」ということは、本質に於てそうした文芸とちがっている。もしその種の文芸が、実に「生活のため」と言われるのだったら、この場合の「ため」は何を意味するのか。それが for の意味、即ち生活に向って、生活の目標のためでないことは明らかだ。なぜなら茶を飲んだり、無駄話をしたりする日常生活や、或は単に米塩のために働らいてる生活、即ち単に「生きる」ための実生活やに、何のイデヤも目標もないことは、初めから解りきってる話だから。ではこの「ため」は、「利用する」「役立てる」という意味になるのだろうか。過去の自然主義の文芸では、多分にそう解したらしい。だがそうとすれば、一層以て不可解であり、奇怪千万な謎語である。なぜなら細民窟のじめじめした長屋住いや、おつけ臭い所帯話やを書いた文学が、実生活のための利益になるということは、いかにしても考え得ないから。
読者にして常識あらば、今日の文壇でかかる啓蒙は無用であろう。文芸は、単に「生活を描く」ことによって「生活のため」と呼ばれるのでなく、生活に理念を有し、イデヤに向っての意欲を掲げることによって、特に「生活のための芸術」