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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

例えば恋愛詩を書いてる人は、恋愛の情緒の中に溺れており、その感激の高調で表現している。この場合に表現が、感情を言語の上に照らすところの、智慧の不断な観照と共に行われているということは、自ら意識的に自覚しないほどでさえある。対象が心内になく、外界にある場合も同様で、例えば西行のような詩人は、自然の風物について、自然それ自体を観照しているのではなく、いつも主観の感情を高調し、感情それ自身の気分の中に、自然を融かし込んでいるのである。

故に彼等の認識は、知的に冷徹した認識でなく、感情の温かい靄の中で、いつも人懐かしげに霞んでいる。それは主観に融け込んでいる客観であり、知的に分離する事のできないものだ。然るにレアリズムの客観派では、こうした感情的態度が排斥される。彼等は物に就いて物を見、科学的冷静の態度に於て、観照を明徹にしようとする。故に主観を排斥し、感情によって物を見ずして、冷酷透明な叡智によって、真に客観的に徹しようとするのである。故に前者の態度は、つまり「主観のための観照」であり、後者は「観照のための観照」である。

しかしながら実際には、真に「観照のための観照」