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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

プラトンについて思惟されるのは、何よりも彼が詩人であったということである。彼に於ては、冷たい、氷結した、純理的のものを考えることができなかった。彼のイデヤは詩的であり、情味の深い影を帯びた、神韻縹渺たる音楽である。これに反してアリストテレスは、気質的の学者であって、古代に於ける典型的の学究である。彼には詩的な情趣が全く無かった。故に彼の哲学した実在は、純然たる理智的の概念であり、冷たい、没情味の、純学術上の観念だった。即ち換言すれば、アリストテレスの観念は純理的の意味であって、プラトンのそれは宗教的の意味である。プラトンにあっては、イデヤが感情の中に融かされ気分の情趣ある靄でかすんでいる。故にアリストテレスの純理を以て、これを理解することは不可能だった。そこでは感情と智慧が融化しており、分離することができないのだ。

このプラトンの観念こそ、それ自ら文芸上に於ける主観主義者のイデヤであって、またその観照に於ける法則である。前章に述べたように、主観主義者の観照は、常に感情と共に働き、感情の中に融化しており、主観と分離して考えられないところの、情趣の温かいものである。