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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
だが我々は、文学の主張について聞くことなしに、実の作品について観察しよう。何となれば芸術は、多くの場合に作品と主張とが一致せず、時に全く矛盾する場合がすくなくないから。そして自然主義の文学が、実に正しくその通りであった。例えばあのゾラを見よ。モーパッサンを見よ。ツルゲネフを見よ。果して彼等の作品に主観がないか。反対にむしろ、倫理感や宗教感が強すぎるほどではないか。すべて彼等の作品は、熱烈なる主観によって、何物かの正義を主張し、社会の因襲に対して牙をむいてる、憎悪の烈しい感情で燃焼されてる。
この不思議な矛盾した文学、自然主義について少しく語ろう。仏蘭西十九世紀に起ったこの文学運動は、正しく浪漫派への反動であり、時代思潮の啓蒙運動を代表している。何よりも彼等は、浪漫派の上品な甘ったるさと、愛や人道やに惑溺している倫理主義を、根本的に嫌ったのである。彼等は当時の科学思潮と唯物観とを信奉して、ひとえに懐疑的態度を取り、前代浪漫派の楽天観に反対した。そしてこのニヒリスティックな人生観から、社会のあらゆる道義観や風俗に挑戦し、故意に人生の醜悪を描き、人間性の本能を高調し、隠蔽されたものを引っぺがし、性の実感的卑猥を書き散らした。