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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

六

張は、命をうけて、おびただしい魏兵を箕谷へ率いて行った。

申耽、申儀のふたりを、列柳城にとどめて、司馬懿自身も前進した。

彼の戦法は、勝てば勝つほど、堅実を加えていた。

この頃、孔明の立場と、その胸中の遺憾はどうであったろうか。いや、それより前に、王平の急使が街亭の布陣の模様を、書簡と共に図面として添えてきたので、彼は一見するとともに、

「あっ。馬謖のばか者」

と、はたとばかり当惑の眉をひそめたのであった。

六

「あれほど申し含めたのに」

と、事に悔いぬ孔明も、このときばかりは、

「馬謖匹夫。ついにわが軍を求めて陥穽に陥らしめたか――」

と、惨涙独語して、その下唇を血のにじむほど噛みしめていた。

長史楊儀は、まだかつて見たこともない孔明の無念そうな容子に、畏る畏る、

「何をそのように悵嘆なされますか」

と、慰める気で訊ねた。

「これを見よ」と、王平の書簡と、布陣図を投げてやって、

「若輩馬謖めは、要道の守りをすてて、わざわざ山上の危地に陣取ってしまった。何たる愚だ。魏軍が麓を取巻いて水の手を切り取ったらそれまでではないか。いくら若いにせよ、こうまで浅慮者とは思わなかった」