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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

「四日あまり潜んでいましたが、いっこう蜀軍の追ってくる気配もありませんので、立ち帰りました」という報告であった。

そこで約七日ほど滞在して、蜀軍の動静をうかがっていたが、いっこう何のおとずれもない。

曹真は、司馬懿に語った。

「察するに、先頃の長雨で、山々の桟も損じ、崖道も雪崩のため蜀兵もうごくことならず、遂に、われわれの退軍したのもまだ知らずにおるのではあるまいか」

「いやいや、そんなはずはないでしょう。蜀軍はかならずわれわれの跡をしたって出てくるにちがいない」

「どうしてそういえるか」

「孔明が追撃を加えてこないわけは、われの伏兵を恐れたからです、思うに彼はこの晴天を望んで、一転、祁山方面へすすんでいるのでしょう」

「さあ、その説にはちと服しかねるな」

「いや、きっと彼は、祁山へ出てきますよ。おそらく全軍を二手に分けて、箕谷、斜谷の両道から」

「はははは。どうかな?」

「決して、お疑いあるべからずです。――今からでも、箕谷、斜谷の途中へ、急兵をさしむけ、道に伏せておけば、彼の出鼻を叩くには充分間に合いましょう」

司馬懿は力説したが、曹真は信じない。常識から判断しても、孔明たる者が、そんな迂愚な戦法は取るまいというのである。