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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
五六年前には、式日以外女生の袴など滅多に見たこともなかったが、此頃では日々の登校にも海老茶が大分殖えた。小学校に女教員が来て以来の現象である。桃之夭々、其葉蓁々、桃の節句は昔から婚嫁の季節だ。村の嫁入婿取は多く此頃に行われる。三日三晩村中呼んでの飲明しだの、「目出度、の若松様よ」の歌で十七荷の嫁入荷物を練込むなぞは、大々尽の家の事、大抵は万事手軽の田舎風、花嫁自身髪結の家から島田で帰って着物を更え、車は贅沢、甲州街道まで歩いてガタ馬車で嫁入るなぞはまだ好い方だ。足入れと云ってこっそり嫁を呼び、都合の好い時あらためて腰入をする家もある。はずんだところで調布あたりから料理を呼んでの饗宴は、唯親類縁者まで、村方一同へは、婿は紋付で組内若くは親類の男に連れられ、軒別に手拭の一筋半紙の一帖も持って挨拶に廻るか、嫁は真白に塗って、掻巻程の紋付の裾を赤い太い手で持って、後見の婆さんかかみさんに連れられてお辞儀をして廻れば、所謂顔見せの義理は済む。村は一月晩れでも、寺は案外陽暦で行くのがあって、四月八日はお釈迦様の誕生会。寺々の鐘が子供を呼ぶと、爺か嬶か姉に連れられた子供が、小さな竹筒を提げて、嬉々として甘茶を汲みに行く。