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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
三
だの、上に梵字を書いて「爰追福者為蛇虫之霊発菩提也」だのと書いた古い新しいさま/″\の卒塔婆と共に、寂しい賑やかさを作って居る。植えた木には、樒や寒中から咲く赤椿など。百年以上の百日紅があったのは、村の飲代に植木屋に売られ、植木屋から粕谷の墓守に売られた。余は在来の雑木である。春はすみれ、蒲公英が何時の間にか黙って咲いて居る。夏は白い山百合が香る。蛇が墓石の間を縫うてのたくる。秋には自然生の秋明菊が咲く。冬は南向きの日暖かに風も来ぬので、隣の墓守がよくやって来ては、乾いた落葉を踏んで、其処に日なたぼこりをしながら、取りとめもない空想に耽る。
三
田舎でも人が死ぬ。彼が村の人になってから六年間に、唯二十七戸の小村で、此墓場にばかり葬式の八つもした。多くは爺さん婆さんだが、中には二八の少女も、また傷い気の子供もあった。
ある爺さんは八十余で、死ぬる二日前まで野ら仕事をして、ぽっくり往生した。羨ましい死に様である。ある婆さんは、八十余で、もとは大分難義もしたものだが辛抱しぬいて本家分家それ/″\繁昌し、孫曾孫大勢持って居た。ある時分家に遊びに来て帰途、墓守が縁側に腰かけて、納屋大小家幾棟か有って居ることを誇ったりしたが、杖を忘れて帰って了うた。