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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
螢
媒妁夫婦は一同に礼して、寿の字の風呂敷に包んだ引き物の鰹節籠を二つ折詰を二つもらって、車で送られてお茶の水停車場に往った。媒妁の家は菜食で、ダシにも昆布を使って居るので、二つの鰹節包は二人の車夫にやった。車夫は眼を円くして居た。
新宿に下りると、雨が盛に降って居る。夜も最早十時、甲州街道口に一台の車も居ない。媒妁夫婦は、潜りの障子だけあかりのさした店に入って、足駄と傘とブラ提灯と蝋燭とマッチと糸経を買った。而しておの/\糸経を被り、男が二人のぬいだ日和下駄を風呂敷包にして腰につけ、小婢にみやげの折詰二箇半巾に包んで片手にぶら下げて、尻高々とからげれば、妻は一張羅の夏帯を濡らすまいとて風呂敷を腰に巻き、単衣の裾短に引き上げて、提灯ぶら提げ、人通りも絶え果てた甲州街道三里の泥水をピチャリ/\足駄に云わして帰った。
「如何だ、此態を勝田君に書いてもらったら、一寸茶番の道行が出来ようじゃないか」
夫が笑えば、妻も噴き出し、
「本当にね」
と相槌をうった。
新郎勝田君は、若手で錚々たる劇作家である。
螢
先刻から田圃に呼びかわす男の子の声がして居たと思うたら、闇の門口から小さな影が二つ三つ四つ縁先にあらわれた。