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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
夏の一日
「リン、――リン、リン」
白銀の鈴を振る様な鋭い蜩の音が響いた。
(明治四十五年 七月一日)
夏の一日
眼をさますと、真裸で寝て居る。外では最早蜩が鳴いて居る。蚊帳外の暗い隅では、蚊が々唸って居る。刎ね起きて時計を見れば、五時に十分前。戸をくると、櫟林から朝日の金光線が射して居る。
顔を洗うと、真裸で芝生に飛び下り、磨ぎ立ての鎌で芝を苅りはじめる。雨の様な露だ。草苅は露の間の事。ざくり、ざくり、ザク、ザク。面白い様に苅れる。
足を洗って、体を拭いて、上ると八時。近来朝飯ぬきで、十時に牛乳一合。
今日は少し日課を書いた。
朝餐の午餐は赤の飯だ。今日は細君の誕生日である。昨日何か手に隠して持って来たのを、開けて見たら白髪が三本だった。彼女にも白髪が生えたのだ。余は十四五から五本や十本の白髪はあった。兎に角部分的には最早偕白髪と云う域に達した訳である。
主婦の誕生日だが、赤の飯に豆腐汁で、鰯の一尾も無い。午前に果樹園を歩いて居たら、水蜜の早生が五つばかり熟して居るのを見つけた。取りあえず午餐の食卓に上す。時にとっての好いお祝。
今日は夏になって以来の暑い日だ。