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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
七
喧嘩の仲入に駈けつけた隣の婆さんは、側杖喰って右の手を痛めた。久さんのおかみは、詫び心に婆さん宅の竈の下など焚きながら、喧嘩の折節近くに居合わせながら看過した隣村の甲乙を思うさま罵って居た。
七
田畑は勿論宅地もとくに抵当に入り、一家中日傭に出たり、おかみ自身手織の木綿物を負って売りあるいたこともあったが、要するに石山新家の没落は眼の前に見えて来た。「お広さん、大層精が出ますね」久さんが挽く肥車の後押して行くおかみを目がけて人が声をかけると、「天狗様の様に働くのさ」とおかみが答えたりしたのは、昔の事になった。おかみは一切稼ぎを廃した。而して時々丸髷に結って小ざっぱりとした服装をして親分と東京に往った。家には肴屋が出入したり、乞食物貰いが来れば気前を見せて素手では帰さなかった。彼女は癌腫の様な石山新家を内から吹き飛ばすべき使命を帯びて居るかの様に不敵であった。
*
到頭腫物が潰れる時が来た。
おかみは独で肝煎って、家を近在の人に、立木を隣字の大工に売り、抵当に入れた宅地を取戻して隣の辰爺さんに売り、大酒呑のおかみのあとに品川堀の店を出して居る天理教信者の彼おかず媼さん処へ引揚げた後、一人残った腫れぼったい瞼をした末の息子を近村の人に頼み、唯一つ残った木小屋を売り飛ばし、而して最早師匠の手