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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
五
墓が近いので、彼女の家の者はよく墓参に来た。墓守の家の女児も時々園の花を折って往って墓に插した。三年前砲兵にとられた彼女の二番目の兄は、此の春肩から腹にかけて砲車に轢かれ、已に危い一命を纔にとりとめて先日めでたく除隊になって帰った。「お安さんは君の身代りに死んだのだ、懇に弔うて遣り玉え」墓守は斯く其の若者に云うた。
五
墓地が狭いので、新しい棺は大抵古い骨の上に葬る。先年村での旧家の老母を葬る日、墓守がぶらりと墓地に往って見たら、墓掘り役の野ら番の一人が掘り出した古い髑髏を見せて、
「御覧なさい、頬の格好が斯う仁左衛門さんに肖てるじゃありませんか。先祖ってえものは、矢張り争われないもんですな」
と云うた。泥まみれの其の髑髏は、成程頬骨の張り方が、当主の仁左衛門さんそっくりであった。土から生れて土に働く土の精、土の化物とも云うべき農家の人は、死んで土になる事を自然の約束として少しも怪むことを為ない。ある婆さんを葬る時、村での豪家と立てられる伊三郎さんが、野ら番の一人でさっさと赤土を掘りながら、ホトケの息子の一人に向い、
「でも好い時だったな、来月になると本当に忙しくてやりきれンからナ」