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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
二三年ぶりに来て見た男が、悉皆別荘式になったと云うた。御本邸無しの別荘だが、実際別荘式になった。畑も増して、今は宅地耕地で二千余坪になった。以前は一切無門関、勝手に屋敷の中を通る小学校通いの子供の草履ばた/\で驚いて朝寝の眠をさましたもので、乞食物貰い話客千客万来であったが、今は屋敷中ぐるりと竹の四ツ目籬や、、萩ドウダンの生牆をめぐらし、外から手をさし入れて明けられる様な形ばかりのものだが、大小六つの門や枝折戸が出入口を固めて居る。己と籠を作って籠の中の鳥になって居るのが可笑しくもある。但花や果物を無暗に荒されたり、無遠慮なお客様に擾わさるゝよりまだ可と思うて居る。個人でも国民でも斯様な所から「隔て」と云うものが出来、進んでは喧嘩、訴訟、戦争なぞが生れるのであろう。
「後生願わん者は糂甕一つも持つまじきもの」とは実際だ。物の所有は隔ての原で、物の執着は争の根である。儂も何時しか必要と云う名の下に門やら牆やら作って了うた。まさか忍び返えしのソギ竹を黒板塀の上に列べたり、煉瓦塀上に硝子の破片を剣の山と植えたりはせぬつもりだが、何、程度の問題だ、これで金でも出来たら案外其様な事もやるであろうよ。