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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
都々逸氏歌うて曰く、
色のいの字と命のいの字
そこで色事命がけ
生殖は命がけ。嫉妬は必死。遊戯で無い。
命がけで入り込んで、生殖の為に一命を果した彼無名犬の死骸を、欅の根もとに葬った。向うの方には、二本投げ出した前足に頭をのせて、頬杖つくと云う見得でデカがけろりとして眺めて居た。
*
二時間の後、用達に上高井戸に出かけた。八幡の阪で、誰やら脹脛を後から窃と押す者がある。ふっと見ると、烏山の天狗犬が、前足を挙げて彼の脛を窃と撫でて彼の注意を牽いたのである。此犬はあまり大きくもないが、金壺眼の意地悪い悪相をした犬で、滅多に恐怖と云うものを知らぬ鶴子すら初めて見た時は魘えて泣いた。「白」が居た頃、此犬は毎に善良な「白」を窘め、「白」を誘惑して共に隣家の猫を噛み殺し、到頭「白」を遠方にやるべく余儀なくした、云わば白の敵である。白の主人の彼は此犬を憎んで、打殺そうとしば/\思った。デカが来ぬ間は、此犬もピンに通うて来た犬の一つであった。其犬すら雌犬のピン故に、ピンの主人の彼に斯く媚びるのである。甚あわれになった。天狗犬は訴うる様な眼付をしてしば/\彼を見上げ、上高井戸に往って復るまで、始終彼にくっついて歩いた。