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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
東京のさる身分ある人の女で、里子に来て、貰われて橋本の女になった。橋本の嗣子が亡くなったので、実弟の谷さんを順養子にして、いさちゃんを妻わしたのである。余等が千歳村に越して程なく、時々遊びに来る村の娘の中に、垢ぬけした娘が居た。それがいさちゃんであった。彼女は高等小学を卒え、裁縫の稽古に通った。正月なんか、庇髪に結ってリボンをかけて着物を更えた所は、争われぬ都の娘であったが、それでも平生は平気に村の娘同様の仕事をして、路の悪い時は肥車の後押しもし、目籠背負って茄子隠元の収穫にも往った。実家の母やマアガレットに結って居る姉妹等が遊びに来ても、いさちゃんはさして恥じらう風情も無かった。
田舎は淋しい。人が殖え家が殖えるのは、田舎の歓喜である。人が喰合う都会では、人口の増加は苦痛の問題だが、自然を相手に人間の戦う田舎の村では、味方の人数が多い事は何よりも力で強味である。小人数の家は、田舎では惨なものだ。何の家でも、五人六人子供の無い家は無い。この部落でも、鴫田や寺本の様に屈強な男子の五人三人持て居る家は、家も栄るし、何かにつけて威勢がよい。養蚕が重な副業の此地方では、女の子も大切にされる。