Japanese reading practice

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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens

Aozora Bunko

印度洋

無事に此関所も越して、彼は母と姉と々として堤を歩んだ。春の日はぽかり/\春の水はのたり/\、堤外は一面の紫雲英で、空には雲雀、田には蛙が鳴いて居る。明日家に帰る前に今夜泊る沼山津の村は、一里向うに霞んで居る。……

「阿父、ほら此様に摘んでよ」

吾に復えった彼の眼の前に、両手につまんで立った鶴子の白胸掛から、花の臙脂がこぼれそうになって居る。

(明治四十四年 五月八日)

印度洋

夜、新聞で見ると、長谷川二葉亭氏が肺病で露西亜から帰国の船中、コロムボと新嘉坡の間で死んだとある。去十日の事。

馬琴物から雪中梅型のガラクタ小説に耽溺して居た余に、「浮雲」は何たる驚駭であったろう。余ははじめて人間の解剖室に引ずり込まれたかの如く、メスの様な其筆尖が唯恐ろしかった。それからツルゲーネフの翻訳「あひゞき」を国民の友で、「めぐりあひ」を都の花で見た時、余は世にも斯様な美しい世界があるかと嘆息した。繰り返えし読んで足らず、手ずから写したものだ。其後「血笑記」を除く外、翻訳物は大抵見た。「其面影」はあまり面白いとも思わなかった。「平凡」は新聞で半分から先きを見た。浮雲の筆は枯れきって、ぱっちり眼を開いた五十男の皮肉と鋭利と、醒めきった人のさびしさが犇々と胸に迫るものがあった。