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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
デカの死
「何の位でとめられるですかね」またそろ/\臆病風が吹いて来た余は、右手にかけて居る運転手に問うた。
「三間前ならトメます。運転手は中々頭がなければ出来ません」
「随分神経を使うですね」
「エ、然し愉快です――力ですから」
忽世田ヶ谷村役場の十字路に来た。南に折れて、狭い路を田圃に下り、坂を上って世田ヶ谷街道に出るまで、荷車が来はせぬか、荷馬車が来はせぬか、と余はびく/\ものであった。
世田ヶ谷に出て、三軒茶屋以往は、最早東京の場末である。電車、人力車、荷車、荷馬車、馬、さま/″\の人間の間を、悧巧な自動車は巧に縫うて、家を出て三十分、まさに青山に着いた。
余は老人子供を扶け下ろして、ホット一息ついた。
(明治四十五年 五月十八日)
デカの死
昨日隣字に知辺の結婚があった。余は「みゝずのたはこと」の校正を差措いて、鶴子を連れて其席に連なり、日暮れて帰ると、提灯ともして迎えに来た女中は、デカが先刻甲州街道で自動車に轢かれたことを告げた。今朝も奥の雨戸を開けると、芝生に腹這いながら、主人の顔を見て尻尾振り/\した。書院の雨戸を開けると、起きて来て縁に両手をつき、主人に頭撫でられて嬉しそうに尾を振って居た。