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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
五
余は明治の齢を吾齢と思い馴れ、明治と同年だと誇りもし、恥じもして居た。
陛下の崩御は明治史の巻を閉じた。明治が大正となって、余は吾生涯が中断されたかの様に感じた。明治天皇が余の半生を持って往っておしまいになったかの様に感じた。
物哀しい日。田圃向うに飴屋が吹く笛の一声長く響いて、腸にしみ入る様だ。
五
八月一日。
月の朔で、八幡様に神官が来て、お神酒が上る。諒闇中の御遠慮で、今日は太鼓も鳴らなかった。
今日から五日間お経をたてる、と云う言いつぎが来た。先帝の御冥福の為。
鶏小屋に大きな青大将が入って、模型卵をのんだ、と日傭のおかみが知らして来た。往って見ると、五尺もある青大将が喉元を膨らして、そこらをのたうち廻って居る。卵の積りで陶物の模型卵を呑んで、苦しがって居るのだ。折から来合わして居たT君が、尻尾をつまんで鶏小屋から引ずり出すと、余が竹竿でたゝき殺した。竹で死体を扱いたら、ペロリと血だらけの模型卵を吐いた。此頃一向卵が出来ぬと思ったら、此先生が毎日召上ってお出でたのだ。青大将の死骸は芥溜に捨てた。少し経って見たら、如何したのか見えなかった。復活して逃げたのかも知れぬ。